sense of coherence scale の尺度開発

最近国内外の雑誌の査読をしていてよく尺度開発の論文にあたっています。自分はいくつかそうした論文を書いた経験があるので、それであてられるのかもしれませんし、SOCに関しては、英文で書いた論文もあるのでその関係なのかもしれません。
非常に良く見受けられるものは、SOCスケールもそうですが、翻訳尺度で、オリジナルでは例えば3下位因子にわかれて開発されているにもかかわらず、探索的因子分析の結果だけを見て、そうではない新たな下位因子を提案してしまうストーリーです。
考察には、オリジナルの開発国との文化的な差異を強調したりしているのですが(クロスセクショナルなデータなら、代表性やその再現性など突っ込みどころも他にあるのですが)、もし新たな下位因子を強調したい場合、まずは、オリジナルの下位因子を検証的因子分析(confirmatory factor analysis)で検討して、非常にmodl fitが悪くて、オリジナルの因子構造を採択出来ない、ということを示してしてから検討してほしいものです。
SOCスケールはファセットアプローチという方法をとって開発されていて、その中でマッピングセンテンスという方法で項目が作成されています。
マッピングセンテンスには、SOCの場合は刺激の性質(手段的・認知的・感情的)、刺激の源(内的・外的・両方)、刺激が課す要求(具体的・散漫・抽象的)、時間(過去・現在・未来)、そしてSOCの構成要素(把握可能感・処理可能感・有意味感)のそれぞれがあって、その組み合わせ(3^5=243通り)で成り立っています。そこから項目分析を繰り返して29項目に減らしているのですが、探索的因子分析をすると、どうしても過去の項目同士、現在の項目同士で固まってしまったり、内的同士、外的同士で固まってしまったり、本来チェックしたいSOCの3つの構成要素別には固まらなかったりすることがしばしばです。
尺度を作って探索的因子分析をしていて、ある一つの因子には、全て逆転項目だけが固まってしまうことがあります。これは私だけでなく、経験したことがある人は少なくないと思います。
つまるところ、相関だけでグループ分けをしてしまう探索的因子分析の結果だけに頼り過ぎてしまうのも問題のように思います。
上記の例のように、従来の因子構造が検証的因子分析で否定され、新たな構造を考えたい場合は、探索的因子分析の結果を参考にしてみることも大事だと思います。