proactove copingについて

昨日聖路加でポジティブサイコロジー勉強会がありました。テーマは、proactive copingについての報告でした。以前にもこの会でやったのですが、多分その時私はまだ臨床で働いていて、2回連続のテーマで後半の1回しか参加しておらず,うまく議論に乗れなかったような気がして、そのまま放置していた概念でした。
理論としては、ラザルスのストレスアプレイザル理論の第1段階をモチーフにしていて、Hobfollの資源の保存理論を元にしているということで、ストレッサーにたいしてそれを挑戦と見なしたり成長の糧と見なしたりする努力がプロアクティブコーピングとのことです。SOCの有意味感とほとんど同じ概念だろうと思われました。

ただ、別の定義、資源との関係についても言及されているようで、挑戦的な目標や個人的成長を促進するための資源の構築に関する努力、という定義もあったりして、定義のゆらぎがあるようにもみえました。暖かい目で見れば、まあ、一緒だよ、と言うことかもしれませんが、SOCの有意味感が言うところの、刺激に対してそれを挑戦と見なしたり成長の糧と見なしたりする感覚、と言うところとは少し離れているような、むしろ、適宜資源を運用できる自信の感覚である処理可能感が混ざっているようにも見受けられました。

尺度を見てみると、プロアクティブコーピング尺度として52項目あり、さらにその中に下位尺度としてのプロアクティブコーピング尺度14項目ありました。この上位概念と下位概念が同一名称であると言う点がわからなかったのですが、昨日の議論では、まあ、この下位尺度14項目で良いのではないかと言うことになりました。
この下位尺度のプロアクティブコーピング尺度は、定義としては前者で、資源とは離れていて、ストレッサーを挑戦的に捉えるという項目のようです。例えば「難しい物事に挑戦し、達成するのが好きだ」とか、「夢を思い描き成し遂げようとする」とか、「それは無理だよといわれてもやってみせる」とか。逆転項目で「物事を流れにまかせようとする」という項目もありました。この辺りは、有意味感の尺度項目に非常に近い項目だと思いました。ただ、すごくパワフルで、SOCの場合は、人生について考えさせることが多くて、「今までのあなたの人生には明確な目標や目的があった」とか、「将来のあなたの人生は意味や目的に満ちたものになる」とか、人生の見方や考え方を聞いているということで、無理している感じではないのですが、このプロアクティブコーピング下位尺度のほうはかなり強い人間だなあと。山崎先生が言うところの欧米系の概念の印象でした。

下位尺度には、サポートの模索尺度というのもあって、これは後者のプロアクティブコーピングの定義を構成する指標なのだと思いますが、資源の構築、というところでサポート資源をどう探すかという尺度でした。例えば「問題解決には他人からのアドバイスが役に立つ場合もある」「他人に話すと問題に関する違った視点を得られるから本当に役に立つ」という、サポート源としての他者に対する考え方を問うていました。これはSOCの処理可能感の「あなたはこの先頼りにできる人がいつも居ると思いますか?必ず居ると思う」「これまで他人の協力が必要なことをしなくてはならないとききっとうまく行くと思った」という項目あたりに似ています。ただ、サポートの模索下位尺度はあくまでもその名の通り人的なサポートのみを扱っていて、処理可能感は、例えば、「人生での出来事に対していつも解決策を見つけることができる」とか、「人生の大事な場面で困難に直面したとき必ず乗り越えられるとおもう」といった、サポートだけでなく、あらゆる汎抵抗資源、カネや地位やネットワークや生物学的知識、心理的資源、知識などなど、を想定としています。

資源をうまく活用して乗り越えるという感覚、さらにはストレッサーを挑戦と見なす感覚、という部分でSOCと似ている理論であるのですが、資源の言及がサポートに限られている点で異なるようにも思いました。また、把握可能感に相当する部分は特に言及されていませんでした。辛口に言えば、とくに目新しいものではなくて健康生成モデルからは出ていない理論だなあと。下位尺度はいずれもSOCの構成要素になっていそうです。
ただ、SOCの有意味感の考えが好きで着眼したい、取り出して着眼してみたいという場合には、両者は概念としてはほとんど同じのもののように思われますので、このプロアクティブコーピング下位尺度も取り出して使用してみるのも良いのではないかと思いました(パワフルな表現に抵抗を感じるならSOCの有意味感下位尺度を使えば良いかもしれませんが)。あるいは、「サポート模索」という尺度では人的サポート資源に特化した部分の考え方については詳細に測定できる概念のようなので研究目的によっては参考にできると思いました。SOC研究的には、SOCと同時に測定することを通じて、相関をとりそれぞれの下位概念間の関係についてじっくり検討して、SOCとは何かを考えてみたいと思いました。