10月のSOC研究会

10月、11月は5月6月と並んで多忙な時期で、今年は講演&シンポジウムや公衆衛生学会など、様々なイベントがありました。その都度書いていかないと、何があったのか忘れてしまいそうで、そのためのこのブログであったのですが、忙しさにかまけてさぼり気味でした。忘れないうちに、少しずつ思い出して書いていきたいと思います。まず10月13日にあったSOC研究会です。
今回は、研究発表は山崎先生の民族衛生学会での報告内容のリハーサルという形でした。そのあと、米倉祐貴さん、横山由香里さんの文献紹介がありました。山崎先生の報告は、共同研究者に成っていて、分析の相談も受けていましたし、結果は興味深いのですが、まだ分析途中で、最終結果が出るまでにはもう少し時間がかかりそうでした。SOCのストレッサーの交互作用効果に関する分析でした。
最も興味深かったのは、横山さんの報告の以下の文献でした。
Nishi D, Matsuoka Y, Kim Y. Posttraumatic growth, posttraumatic stress disorder and resilience of motor vehicle accident survivors. Biopsychosoc Med. 2010 Jun 24;4:7.
これは、Post traumatic growth(PTG)とSOC29項目版とPTSDの関連性の検討を日本人の自動車事故負傷者のデータで検討したものです。PTGは、PTGIというスケールを用いていて5つの下位尺度に分かれるのですが、各下位尺度別に相関を見ていました。把握可能感と、処理可能感は同じような動きをしていて、PTGIのうち、「他者との関係性」、「個人的強さ」に共通して関連があり、「新たな可能性」に弱い相関がありました。その一方で、有意味感は、これら3つに加えて、「スピリチュアルな変化」「生への感謝」も相関があり、いずれの下位尺度とも相関がありました。トータルにみると、後者2つの下位尺度との相関は有意に出ないのですが、これは、項目数として、把握可能感と処理可能感をたすと9項目あるので、単純に合計すればこれらの影響を受けてしまって有意味感下位尺度の影響力が下がってしまうからで、興味深いのはPTGIと有意味感の相関が高かったという点です。有意味感自体は、直面する出来事に対して挑戦と思える感覚なのですが、過去の経験の再意味付けの状況とも言えるPTGIの各下位尺度との相関が高いことがわかリました。
SOCの有意味感は重要であって、他の下位尺度に影響を及ぼす存在であるとアントノフスキーはいっています。それは、有意味感がポジテォブな見方考え方そのものであるからだと思うのですが、今回PTGIとの相関が高かったのは、そうした自己の経験の見方の変化や新たな気付きが、大きく有意味感に関係するということを表していることにほかならないことがわかりました。