3項目版sense of coherenceの開発

現在社会科学研究所で行っている全国パネル調査に載せていただく目的で3年前に3項目版のSOCスケールの開発を行いました。
当初私自身、こういった超簡略化スケールの開発にはあまり乗り気ではなかったのですが、様々な事情でしぶしぶ開発に乗り出しました。その事情について整理してみます。
一つ目が、13項目であっても長すぎるという指摘があったためです。つまり、パネル調査は、私だけの調査でなく、社会学や教育学、経済学、政治学など様々な分野の先生方が協力し、全20ページ足らずの調査票を開発しています。その中で、SOC13項目を全て入れると1ページ以上をとってしまい、他の先生方の入れたい質問も入らない状況になってしまうからです。5000人を5年間追跡するという規模ですので、お互い譲り合い主張し合いながら充実した調査票を作成しなければなりませんでした。そのためには簡略化を行わなければなりませんでした。そんな調査には参加しなければよい、と思う人もいるかもしれませんが、日本国内でその規模で、SOCを5年間追跡させてくれるためのお金をくれるセクションがどこにあろうか、と思います。ここで業績をためておいて、大事であるという根拠をたくさん作ることによって、13項目丸ごと入れることができるような調査ができるのではないかという期待もあります。
二つ目が、SOCの短縮版はいくつかあり、それを翻訳すればよいのかもしれませんが、いずれも短所が多かったということです。6項目版というのがあり、ちょうど良いかとも思っていたのですが、この6項目は13項目版の各下位尺度より2項目ずつ抽出したものです。基本的に多項目スケールは、多項目が集まって初めて意味をなすので、その中の1項目を抜き出してきたところで、そのワーディングを見ても意味が良く分からない場合が良くあります。BASOC(Brief Assessment sense of coherence)という尺度もあり、これは、13項目(確か)の因子分析で1因子で検討した結果因子負荷量の多かった3項目を抽出したもので、わからなくもないのですが、3つの下位尺度のうち2つの下位尺度の項目からしか構成されていませんでした。Lundberg氏の作成した3項目版SOCスケールが短縮版の中で最も使用されています。これは、SOCの定義を参考にオリジナルで作成した3項目です。しかし、残念ながら日本語にするのが極めて困難なワーディングで、必ずしも本当にAntonovskyのSOCの定義にしたがっているのかどうか、判断しかねる内容でした。
三つ目が、そのLundberg氏の開発した3項目版SOCスケールがEPICコホートに採用され、数万人の縦断データをもとにした分析結果が多く報告されたことにあります。無論研究限界として、3項目版であるという点が挙げられていましたが、様々な水準の高い医学系ジャーナルで取り上げられており、短縮版でもいけるんだ、という自信になりました。
四つ目が、当時山崎喜比古先生らがはじめた慢性疾患セルフマネジメントプログラムの評価研究に、元々はなかったのですが、試しに短縮版でSOCを入れてみたい、という要望があり、私の短縮版の必要な状況にさらなる後押しが加わったということです。
こうして、新たに短縮版のSOCスケールを開発することにしました。
作成プロセスと、今後の課題については別途書きたいと思います。