私たち(SOC研究会関係)が制作したSOCに関する書籍について

  • 思春期のストレス対処力SOC

タイトルは「思春期の」となっていますが、思春期を対象とした調査に基づいて、SOCの形成・発達の理論について整理し、一部検証を試みた書になっています。SOCの形成や発達、あるいは向上について関心がある方にとっては大変役に立つのではないかと思います。親子間のペア調査データや、高校3年間の追跡データなど、これまでに検討されてこなかったデータをもとに、様々な分析を試みています。込み入った分析には解説を加えており、難しいことをわかりやすく、の精神で共同で書き下ろしたものです。実際に使用した調査票もありますので、これから調査を行おうとしている方にも参考になると思います。

また、第1章のSOCに関する解説は大変にわかりやすいものになっているほか、各所にBoxを設けてコラム形式でキーワード解説を入れているため、これから研究をしようと考えている初学者にとっても有効になると思います。

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  • 健康生成力SOCと人生・社会

全国調査を行い、次の3つの目的で検討を行った成果をまとめたものです。

①日本語版13項目版SOCスケールの標準化をおこなうこと

②ライフコース、社会経済的地位、社会関係とSOCとの関係について整理すること

③国際比較を通じてSOCのスコアおよび関連要因について文化的要因がどのように関連するのかを明らかにすること

また、

④関連する概念(ヘルスリテラシー、統御感(sense of mastery))との関係や内容の相違について整理するとともに分析結果を示す

ということも目的にしています。

SOCや健康生成論に関する基礎研究は、この30年間で、生理学的なメカニズムの部分を残し、それ以外についてはほぼ明らかにされてきています。もはや今や臨床あるいは政策的な側面での応用段階に入っていると思います。そのような中で、社会科学的な側面での基礎研究の最終段階のまとめ、という性質がこの書にはあると思っています。

また、先に示したように、13項目版SOC尺度の他、SOC3-UTHS(東大健康社会学版3項目SOCスケール)、統御感尺度、伝達的・批判的ヘルスリテラシー尺度、mMOS-SS(修正版MOSソーシャルサポート尺度)の全国標準値を算出しているので、これらの指標を使用しようとしている方も参考になるはずです。

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なお、「ストレス対処能力SOC」は2008年の刊行より10年が過ぎたために、内容の再整理や修正などの必要性に迫られていること、「能力」という表現はSOCにはあてはまらないのではないかという議論があったこと、などから、大幅改訂作業を行っております。2月末ごろには刊行に至るはずです。

 

サイト移転

2019年2月末のHatenaDiaryのサービス終了に伴って、HatenaBlogのほうに移動しました。

リンクなども切れてしまっていましたが(ファイルのアップロードができなくなったため、別のストレージにリンクを貼りなおしています)、一部復旧させています。

ここ数年、SOCへの関心がやや薄れてきていることもあってほとんど更新をしておりませんが、何か参考になることもあるかもしれませんので引き続き公開を続けようと思います。

各種SOC尺度について

13項目版SOCスケールについては、現在日本人における標準化の検討を行っております。
その一部について、日本公衆衛生学会誌に掲載されていますのでご報告します。
http://kurasi.hatenablog.com/entry/2015/08/20/152826
(調査報告のページへ)

3項目版SOC尺度について、項目マイナーチェンジを実施しています。
なお、これまでは若年者を対象とした研究で検討しておりましたが、今回20代から70代の対象者となっています。現在鋭意報告の論文を検討しておりますが、ご使用を希望の方はこちらを参照してください。
研究目的に限り3項目版の使用は自由です。
13項目版スケールにつきましては使用ルールがありますので以下のサイトを参照してください。
http://hlth-soc.net/soc/

SOCスケールの使い方に関するサイトができました

以前より繰り返しご案内してきましたアントノフスキーによるSOCスケール日本語版(29項目版および13項目版)の使い方について、webサイトがオープンしましたのでご案内します。
http://hlth-soc.net/soc/
SOCスケールの使い方や問い合わせについては、そのサイトを参照するようにお願いします。

また、3項目版SOCスケール(SOC3-UTHS)については、引き続きこれまで通りの使用が可能です。
よろしくお願いします。

第33回日本思春期学会

8月30日に第33回日本思春期学会学術集会でシンポジウムがあり参加してきました。
今回の学会はテーマが「思春期の健康生成-pathogenesisからsalutogenesisへ‐」で、メインシンポジウムも「思春期における健康生成論とSOCへのアプローチ」と言うテーマでした。
シンポジストを依頼されて、とりあえず高校生を対象とした調査データで、まだ分析が十分にできていない部分を分析して報告したい、と思い、これを期に二次分析を行って報告しました。
スライドは下に貼り付けます。
報告の目的は3つ掲げていて、一つはSOCの3年間の推移を成長曲線モデルで曲線推定すること、二つ目は、cross-lagged effect modelとsynchronous effect modelの分析を行って、SOCのwell-beingへの影響のしかたについて、成人のそれと同じなのか、そうでないのか、そうでないならばなぜ違うのかを検討すること、三つ目は潜在成長曲線モデルで成長曲線に対する影響を及ぼす変数として学校帰属感覚の3つの下位尺度を掲げてその影響力を見ること、また、3年間のSOCスコアの平均と、標準偏差そのものを従属変数として、小学校中学校時代の経験に関する変数の影響を見ること、の3つでした。
少し手間がかかりましたが、興味深い結果になりました。「思春期のストレス対処力SOC」でも、記述的な統計結果から推測的に、思春期のSOCは形成途上にあることを述べましたが、今回は、分析レベルで説明できたのではないかと思います。つまり、この時期の変化によって、時間を跨いで健康に影響することが難しいのではないかと。健康の予測というのも難しいのではないかと。しかし、検討する時間間隔を狭めると、極端なところ横断調査デザインになると関連性は強く出てくるし、SOCが原因で健康が結果という因果も考えられる。時間間隔が離れてしまうと、SOCが変化してしまう関係でうまく関連性が出てこない。
もう一つは、ベースライン時にSOCを高中低で分けて、その後の推移を見たところ、高SOC群はU字に変化している一方で、低SOC群は直線的に上昇していることがわかりました。
また、これら3群の平均的な推移は、3年間交わることなく、どの時点でも、高中低の相対位置がかわらない、つまり、3年間を通じて高中低は定まってしまっている可能性が高いことがわかりました。言い換えると、始めに高かった群は引き続き高い群にいる可能性が高い。低い群だと低いままでいる可能性が高い、と言うことになりました。
思春期学会シンポ報告

第87回産業衛生学会の自由集会

5月21〜24日に岡山で第87回産業衛生学会(http://www.convention-w.jp/jsoh87/index.html)が開催されます。
産業衛生学会は、会員数も数千人だったと思うのですがかなり大きな学会で、地方会組織がしっかりしていて地方会ごとに年次学会をしているほか、毎年1度ずつ、学術集会と、実践現場の医療職が中心の全国協議会を行っている学会です。かつて中・四国地方会の事務局をしていたことがあって、いろいろ管理業務が大変だった記憶があります。
そのような産業衛生学会の学術関係の集会で、SOCに関する自由集会を行うことになりました。元々SOC研究会の一環で、自由集会ができないかと言うことになり、筑波大学の産業精神医学の先生方に相談しており、様々な先生方のご協力を頂いて、開催の運びとなりました。自由集会といっても、学会によってあり方は様々ですし、学会でもその回によっても位置づけが様々です。今回の産業衛生学会では、学会の中の自由企画のシンポジウムのような形で開催されることになりました。
日時・内容は以下のようになります。筑波大学の笹原先生の案もあり、サルートジェニック・カフェ風に開催することになりました。学会に参加される方でご関心がある方は是非ご参加いただければと思います。ちなみにサルートジェニックカフェについては以前に書きました(http://d.hatena.ne.jp/ttogari-tky/20130214)が、その後研究的にさらにいろいろわかってきたそうで報告が楽しみです。


          記
日時:2014年5月24日(土)10:00〜11:40
場所:岡山コンベンションセンター406会議室(第87回産業衛生学会第9会場)
内容(予定):
山崎喜比古先生(日本福祉大学)「産業衛生領域におけるSOC研究〜ストレス研究の文脈とSOCを高める健康職場研究の文脈から(仮)」
影山隆之先生(大分県立大学)「ストレス対処特性とSOC(仮)」
笹原信一郎先生(筑波大学)「サルートジェニックカフェの紹介(仮)」
グループディスカッション
司会:戸ヶ里

SOCスケールについて

アーロン・アントノフスキー氏によって作成されたSOCスケールの日本語版についてです。
昨年よりSOCスケールの使用方法について検討を進めていますが、まだ結論が出ていない状況に有ります。
基本的に2014年4月の段階ではこれまで通り、日本語版の訳者代表である山崎喜比古先生の意向の通り、使用は自由という形で進めています。
SOCスケールは、「東京大学健康社会学アントノフスキー研究会」が翻訳者という位置づけで、山崎先生はその代表者になります。現在この研究会は消滅して、SOC研究全国ネットワークという、東京大学の一研究室の枠にはまらない、広く緩い研究者のつながりという形で存続しており、私はその世話人の位置づけに成っており、本スケールの使用についても検討を進めているという状況です。権利者から直接明確な許可が欲しいという場合は山崎先生に問い合わせる必要が有ります。
検討の結果、方針が出次第、何らかの形で使用方法について公表していきます。そうした公表が行なわれた際には、本ブログでも取り上げていきたいと思います。なお本ブログはあくまでも私個人のブログであって、SOCスケールの使用に関する公的な情報公開の場という位置づけではありませんので申し添えます。
ただし、スケールを含めて何か質問等が有りましたら遠慮なくお問い合わせ下さい。