第7回「こころの健康と経営戦略」フォーラム

 先月10月19日に関西福祉科学大学EAP研究所(http://www.eap-ins.com/index.html)が主催する第7回「こころの健康と経営戦略」フォーラムに参加して参りました。テーマは「打たれ弱い若年社員への成長支援〜若年社員の成長支援を考える」で、今回は基調講演ということでSOCについてわかりやすく紹介してほしいという話でした。また、基調講演のあとにシンポジウムがありました。
 講演に使用したスライドは以下です。
第7回「こころの健康と経営」pdf.pdf 直

 シンポジウムの対象としては、企業の労務担当者がメインで、保健師EAP関係の方もいて、およそ100人程度が集まりました。ちょっと緊張でした。
 反応としては、大変に興味を持った、ということと、これまで少し聞いたことがあったリ、かじったことがあったが大変にわかりやすくて良くわかった、ということが大半でした。また初めて聞いたという方では、この考え方がすごく気に入って、何とか社員のSOCを上げることはできないのか、SOCを上げるプログラムはないのか、というような質問が懇親会でたくさん来ました。さらには、やはり人事考課に使用できないのか、採用の際に何とか使用できないか、という質問も受けました。以下懇親会でのやり取りを中心に書きとめようと思います。
 わかりやすかった、という反応が多かったのがうれしくて、ちょっと時間が足りなかったのですが、少しでも役に立ったようで良かったと思います。
 SOCを上げるプログラムは現在少しずつ検討が続いているが、オプティミズムのようなパッケージとして出てくるのはまだまだ先であろうと、人事については、SOCスコア自体の絶対的な得点化、標準化の検討は十分でなく、あくまでも相対的な分布でしか見れないという点で難しいが、近々標準化については全国調査を実施して使えるようにしたいというように答えました。ただ、SOCが低いことを理由に解雇や採用見送りにするというのはやや早急な話で、若手社員のような年代であれば会社の経験の中で十分なのびしろは存在しうるし、高齢であったとしても、成長しうるものであるので、それだけで判断するのはいささか効率が悪いのではないかと思うと述べました。
 また、SOCの向上を期するうえでは環境整備とそれに伴う良質な経験が必要であるのですが、それだけでなく本人の認知も重要であろうと伝えました。つまり、良い経験になりうるような環境や資源への気づき、意味づけといったところが大事で、その気づきや意味づけを個人だけの力ではなくて、助けてくれる周囲の人々が大事だろうと。心遣いというか気遣いというレベルですが、その気づきや意味づけのちょっとした手助けがSOCの向上には大きくかかわってくる可能性があるのではないかと言いました。これはシンポジウムでもちょっと述べさせてもらいました。
 ほかに、SOCの成長について30歳で止まるのか、生涯成長が続くのか、というあたりで心配した方がいました。私の説明が不足していて、コホート研究の結果が出ていないが、30歳を超しても年齢を追うごとに上昇してくのは間違いないとみてよいだろう、というように答えました。
 これまでSOCは難しいとか、なんとなく興味深いがよくわからないとか、発想は良いが尺度が・・・というようなコメントが多く、比較的ネガティブにとらえられることが多いように思っていました。これまで地味にずっと研究を続けて来はしましたが、それこそ学習性無力感というか、あんまり認められなくて本当にこのテーマで研究を続けてもよいのかと、悩みますし、いまだにそうなのですが、今回の講演では思いのほかこの概念を受け入れてもらって、少しばかし晴れやかになったのが率直な感想です。

 実はこのシンポジウムで別の先生がハーディネスについて紹介していました。司会の先生と相談して、今回来ている人たちはポジティブ心理学的なところで、ハーディネスとSOCの違いについてそれほど興味がないのではないかということであえて触れるのはやめたのですが、いろいろ調べると違いと共通点が見えてきましたので、次回にその点を触れたいと思います。