3項目版sense of coherence尺度の作成プロセス

新年が明けて、昨日から出勤し、じわじわと様々な仕事の存在が明らかになってきて、意外と忙しいことに気付きつつあります。年末年始は連日連夜色々あって、この日常とは明らかに別世界のようであったとつくづく思います。

さて、3項目版のスケールの開発のプロセスについてです。まず、SOC13項目や29項目の中の項目を使う訳にはいかないということで、オリジナルで開発しているLundberg紙の尺度を参考にしようとしましたが、これもなかなか日本語にしづらい表現になっていて、これはSOCの定義をもとに、できる限り定義の中身が損なわれないようにしつつも、平易な表現にせねばならないということになりました。山崎先生と当時CDSMPの研究を牽引していた修士課程の湯川さんと3人で東大近くの地下にある某飲食店の個室に3時間ほどこもって練り上げました。
項目については、有信堂高文社刊の「ストレス対処能力SOC」に示してありますので、そちらを参照されてください。
信頼性妥当性の検討については、どこかの学生のコンビニエントサンプルでやってみては、と言われましたが、私としては当時流行り始めたインターネットリサーチに興味があって、どうせコンビニエントならそちらでやってみたいということで、実施しました。
インターネットリサーチもなかなか複雑で大変に奥が深くて勉強になりました。
しかしそんなデータを示しながらも、パネル調査の調査票に候補として掲げさせていただいたのですが、もう少しわかりやすくしてほしい、というようなコメントが寄せられ、再度修正しました。そして再びネット調査を行い信頼性妥当性の確認を行なった次第です。
信頼性と妥当性については、結局のところ、親の13項目SOCとは相関係数としては0.6を切る程度にとどまってしまいました。学会でも低いではないかと指摘をされました。ただし、これについては、まずは尺度内容自体がSOCの定義に忠実であるという内容妥当性、表面妥当性を主張しています。これについては、フッと一笑に伏してしまう先生も少なくないのですが、ここが最も重要な部分ですし、元々のSOC13自体もどこまで真のSOCに迫っているのか、ワーディングや内容の妥当性について検討した研究は結局のところAntonovskyらの質的な検討の部分でとどまっています。
もうひとつ、関連性が低くなってしまった理由は、オリジナルの尺度項目では感情を捉えてしまっている可能性があるという過去の論文での指摘を踏まえて、感覚の程度(全く感じない〜強く感じる)ではなく、同意の程度(全く違う〜全くその通りである)というスケールにしたためだと思っています。
SOC自体はGHQ12項目などの精神健康、抑うつ・不安系のスケールと大変に相関が高くなる傾向にあります。SOCは精神健康度なのではないか、という指摘も見られているようです。・・・と感じることがある、というスケールでは、feelが反映してしまうのではないか、という恐れがあったためです。相関を高くしようとするならできますが、その後このスケールを使用する分析で、精神健康による交絡が生じているなどの問題が出た場合の対処を考えればリスクを背負っても。。。と思っていました。
名前はSOC3-UTHSと、分析が終わる前から山崎先生が名づけていました。University of Tokyo Health Sociology version of the 3-item sense of coherence scaleの略です。。。東大健康社会学も来年度以降どうなるかわからないので、確かに記念の意味にもなりました。。。