SOC研究の難しさ(その2)

難しさその2. SOCスケール得点の絶対的な評価が定まっていない
SOCスケールは内容的妥当性もあり、信頼性もあり、構成概念妥当性も明確となっている尺度ですが、尺度得点の絶対的な意味については明らかになっていません。つまり、SOCが1点上がることが客観的にどんな意味を持つのかという点です。そもそも心理尺度なので、その意味においては十分に良くできた尺度なのですが、臨床的な意味の部分については未知数です。いわゆる、間隔尺度なのであって、比尺度ではないということになります。
抑うつや不安などのスケールでは、間隔尺度にかかわらず、カットオフ値を設定することで、ハイリスクグループとそれ以外と二値に分けて検討することが行われますが、カットオフの検討はされていません。そもそも、カットオフ値ということは、何かのスクリーニングのために設定するのですが、まず、何を予測するのか、定まりません。ストレス対処機能をもつので、健康なのですが、精神健康も、身体健康も理論的には予測するといわれています。心理社会的なQOLの側面についても予測する可能性があります。なんでも予測する可能性があります。
また、たとえ何らかの障害などを予測するカットオフ値が定まったとしても、低い人に対してどのようにアプローチをするのかという部分で、検討が不十分であろうと思います。主に、SOCをどのようにあげるのか、というところになると思うのですが、ようやく少しずつ検討が進んできている段階です。
あるいは、標準化という作業が進んでいません。全国標準得点というものを算出し、そこと比較できるようにする必要があります。この作業については、13項目5件法版については全国平均得点が算出ができていますが(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshhe1931/71/4/71_4_168/_pdf)、最も良く使われる13項目7件法版については未検討になっています。ここが近々の課題であろうと思います。