「健康生成論とストレス対処力」の授業

 福岡学習センターで「健康生成論とストレス対処力」の授業をしてまいりました。当初はどんなものか、学生の皆さんついてこれるのか、健康生成論を理解できるのか、SOCに興味を持ってくれるのだろうかと大変に不安でした。学生たちといっても、平均年齢が45歳で、ほとんどが自分よりも年上というようなクラスで、こうした経験も初めてでとにかく緊張しておりました。生活と福祉コースというコースに所属しているので、看護系や福祉系に関心がある方が多くいらっしゃるようです。面接授業(スクーリング)は8コマを2日間で行う、というもので、学生たちは二日間同じテーマの授業にかかりっきりになるうえ、週末土日に行うので(普通ならは休養日に当てるはずの日なのに)、やる気がすごいのと、結構しんどいのと、入り乱れた身体的心理的状況なのではなかろうかと思っておりました。

 少なからぬ先生は、グループワークなどを取り入れて話し合いをして発表させる、というような方法も取り入れたりして、学生たちが集中して授業できるように工夫されているようです。ただ、教員の関心がある領域や研究テーマに関連する領域など、柔軟に授業内容を組むことができるので、折角の機会なので、私がこれまでやってきた研究とその周辺の理論などを紹介して学んで帰って行ってもらう、というような目的でとにかくフルに講義してみよう、と思いました。また、ちょうど授業内容を検討する時に「思春期のストレス対処力SOC」を執筆していたので、このテキストの内容を伝えることを中心とした講義をしようと考えました。

 聴講する学生は研究をするわけではないのですが、どのようにして、研究をすることによって知識が作られていっているのか、私のこれまでの研究成果を紹介することで肌で感じてほしく、また、生活や臨床や政策的な部分に何がしかを生かせるようにしてほしい、というコンセプトで進めました。主にアントノフスキーのモデルやそれに関連する考え方など、様々な理論仮説があって、その背景には、様々な歴史的な経緯もあって、社会的な状況や要請もあって、という話にはじまって、それをもとに実際に調査して、データでもやっぱりそれが言えることが分かった、あるいは、残念ながらうまく関係が見つからなかった、思いもよらぬ関係が見つかった、など、紹介しつつ、納得して理解するというような、あたかも一緒に研究しているような感覚を味わってもらえればというように進めました。

 結局当初の心配は完全に杞憂に終わりました。授業中はみなさん本当に真剣で良く聞いていらっしゃって、過去にしてきた様々な大学講義の中で、最も皆さん集中して聞いてくれた授業でした。ただこれは、私の授業が良いというのではなくて、放送大学の面接授業というのはそういうもので、すごく学びたいという気持ちが強い方が集まってきているというのは各方面から聞いておりました。しかし、教える側としても、そうした一生懸命知識を身につけようとしている方々を前にして、本当にやりがいがありました。最後にもとても貴重な話が聞けたとか、大事なことを教わったというような反応があったり、何よりもテキストにした「思春期のストレス対処力SOC」がとても良い本でいろいろ役に立つ本で良かったというような反応が多くあってとても感動しました。頑張って3年間調査して、執筆して本当に良かったと。学生さんたちはみんな大人なので、大人の反応かもしれませんが、いずれにせよ自分にとっても間違った研究をしてきたわけでなかったということがわかって本当に励みになりました。まだ5月に熊本学習センターでの授業があるので、授業レジメや進め方などもう少し修正すべき点は修正したりしてのぞみたいと思っています。


思春期のストレス対処力SOC―親子・追跡調査と提言

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