SOC研究会とポジティブサイコロジーの会

これまでになく日記の間隔がはなれてしまいました。例年4月から6月は様々な授業があるのと、今年は新たに非常勤講師が増えた関係でかなりテンパっており、全く持って研究らしい研究もできず、準備にいそしむ一方で憤慨した日々を送っていました。
そんな中で、自由に議論が行われる小さな研究会は、研究的な関心を高めたり知識を得たりするうえでとても効率が良くて、参加しても楽しいのですが、7月の中旬になって立て続けにそれが二つありました。
1つはSOC研究会です。通称SOC研は今年度から年に4回になり、うち1回は公衆衛生学会の自由集会を兼ねる形になりました。と言うのも主催の山崎喜比古先生の教育拠点が愛知の日本福祉大学に移ったためで、これまでのように、無料で、申し込み不要で、自由参加というスタンスでの開催場所を都内で確保することが難しくなったためです。回数を減らして、主要な研究者が集まる学会の自由集会を利用する、といった方法を取ることになりました。
今回は首都大学東京の荒川キャンパスで行われました。テーマは、松本佳子さん(日本福祉大学研究生)の高齢者の健康関連資源とSOCとメンタルヘルスに関する研究報告、坂野純子先生の思春期向けのwell-being指標の開発の研究、山崎喜比古先生の高齢者向けのSOCの測定に関する報告でした。松本さんの報告に対しては、農村地域の高齢者という制限をつけた研究をしたいということで、農村地域以外の人たちとの比較の視点が重要であろう、ということと、メンタルヘルス指標の使い方に関する議論、つまり、カットオフ値を使って2値に分けることがどこまで有用か、という点について、また、どこまでオリジナリティを出していくことができるのか、と言う点の指摘をしました。坂野先生の研究には、SEMで因子分析をしているのですが、RMSEAが0.09とそれほどよくなく、男女をいり混ぜて分析しているので、別にしたほうが良くなる場合もあるし、その方が正確で示唆に富むのではないかと指摘しました。山崎先生の報告は、SD法が回答しにくいという高齢者に向けて、リッカート方式で測定できるツールを作りたいとのこと文言についてかなり込み入った議論が行われました。まだ完成までは遠いと思います。
立て続けに月曜日にポジティブサイコロジー勉強会がありました。テーマはHandbook of Positive Psychologyか"Sharing One's Story: On the benefits of writing or talking"でした。書くことによる心理的効果については、耳学問で知っている程度でしたが、Pennebaker氏tpそのグループが1980年代から取り組んでいて、免疫系の活性化にもつながるエビデンスを出していたり、健康につながるプロセスとして、書いたり自己開示したりすることと、その共有が図られてsocial integrationにつながることでメンタルヘルスにつながる、と言うようなメカニズムに関する研究がレビューされていました。またwriting療法では、過去のトラウマティックな経験を毎日あるいは定期的に書いていく、という療法になるそうなのですが、その際の副作用的な反応は常につきものでありつつも、経験を整理して意味づけが図られていくこと、そして、表現としてはネガティブなものとポジティブなものが両者がバランスよく入ることが大事であるというようなことの検証結果が示されていました。
介入方法として、直接手を差し伸べる専門家が不要であるという点で有用であるとも思われました。以前に日記療法みたいなものを使って、SOCとの関係を見た事例研究があって、おそらくPennbakerらの研究が引用されていたと思うのですが、効果的で確立した方法であることが良くわかりました。