マインドフルネスプログラムとSOC

先月末、聖路加のポジティブサイコロジー勉強会があり、結膜炎の影響と風邪を併発して散々な状況だったのですが、気合い?で準備をして報告し、終了後の食事会まで参加してしまった有様でした。(おかげで治癒が遅れてしまったようにも。。。)
以下の論文を報告して参りました。
Patricia L. Dobkin & Qinyi Zhao. Increased mindfulness - The active component of the mindfulness-based stress reduction program? Complementary Therapies in Clinical Practice Volume 17, Issue 1 , Pages 22-27, February 2011

レジメは以下です。
031912PPtogari.pdf 直

 この論文は、マインドフルネス瞑想という、元々は数十年前に慢性疾患患者の疼痛緩和のために取り入れられたプログラムが近年ストレスリダクションの方にも取り入れられてきており、臨床で使用されるようになって来ていることから、その効果に至るメカニズムを明らかにしようという、プロセス評価的位置づけの論文でした。したがって、対照群は設けられていないものです。マインドフルネス訓練は最近とてもよく報告に見られていて、わが国の一部ではとても流行っているようにも見受けられます。
 マインドフルネス度を測る尺度があって(恐らくこの尺度のようですがhttp://www.ppc.sas.upenn.edu/mindfulnessscale.pdf)、恐らく意図としては、この尺度を媒介して、抑うつや、心身症状、ストレス感、SOCに影響するのではないかという仮説と、これらの指標に対して、マインドフルネスプログラムのどの部分がどのように影響するのかについて明らかにしようと言う者になっています。
 というのも、マインドフルネスプログラムには、様々な内容が入っていて、週に1度、グループ一同に会して行なう公式な訓練の他、家庭で生活している最中にも応用して行なう内容があったり、単に瞑想するだけでなく、呼吸法やヨガや、ボディスキャンというようなものなどが含まれていて、それぞれの行為が、例えば、自宅でどのくらい繰り返せばどういった部分に影響するのか、と言うようなメカニズムについてわかっていないところが多いとのことでした。(RCTやメタアナリシスの結果はあるようなのですが。)
まずプログラム前後の各指標の変化ですが、対照群はないものの、介入前と比較して結局結果としては、SOCを含めていずれの指標も有意に向上・好転しているという結果でした。また、終了後のマインドフルネス度ともっとも相関が高かった指標がSOCであり、SOCは他の指標との相関も高いという、見慣れた結果でありつつも、マインドフルネス度とSOCの相関については、色々考えるところがありました。一方で、プログラムの各側面と各指標との関係については、散々で、唯一意識的な呼吸の利用しやすさの程度(usefulness)がSOCの向上、ストレス感の低下に有意につながっていた、という結果でした。
 おそらくは、こうした各プログラムの各側面が複雑に関連し合って影響している可能性があって、単独で各指標に影響しているというものではないのかもしれません。しかし、ただ、こうした自覚呼吸が実際に効いていた、特にSOCにも関係したというのは、驚きでした。以前レスで来ていたACTともこのマインドフルネスは関係するとのこと、ありのままを受け入れるという心の中の働きと、心身症自律訓練法にみるような、体と心の一体感、一貫性と言う部分の認知が大きくSOCの向上にも関わっているということなのだろうか、と思いました。そう言えば、ずいぶん前ですが、ジュネーブの健康生成論に関する会議の際に、どこかの国の医師で、身体的一貫性とSOCとの関係性にこだわっていた方がいて質問にたっていたのを思い出しました。探せばもっと論文がでてくるかもしれないと思いました。
 それにしても、免疫状態や自律神経系の働きにはじまり、こうした心身相関の認知、社会関係の認知、さらには、社会的役割や社会階層に至るまで、本当に様々な資源がSOCに関係することが実証的にわかって来ました。