SOCスケール得点の意味について

看護の院生への統計の授業も佳境に入って来ました。2変量間の検定についてなかなか理解していただけなかった学生さん方が、多変量解析の話には大変に食いついて来ていて、不思議です。やはり看護系の方々は人間を様々な側面から理解し関わっていくことに元々興味があるのだと思いました。むしろ、看護していくうえで、患者さんには様々な要因が絡み合って一筋縄では行かないことを、経験的に良く知っているので、多変量解析がしっくりくるのだと思いました。2変量間の検定に比べると多変量は数理的には高度ですが、できる限り噛み砕いて最低限知ってもらうことを伝えて、ご自身の研究関心の中でどんどん研究を進めることができるように知識を伝えていきたいと思っています。

さて、先週の学会で来た質問その1です。回答はほぼhttp://d.hatena.ne.jp/ttogari-tky/20101222に記載してあります。
端的に言えば、SOCスケールは心理尺度ですが、臨床適用するほど研究の蓄積はありません。臨床適用のためには、どうすればスコアがあがるのか、下がるのかという、介入研究の成果が必要ですが、介入研究はまだほとんどないのが現状です。スクリーニングにしても、影響の評価が必要ですが、学校や職場適応とか、そういった目的になっていくのだと思いますが、まだ検討は始まったばかりです。
そのようなスケールを使う意味はあるのか、ということ臨床の方からあがって来そうですが、眼に見えない概念を測定するという心理尺度測定の目的そのもののわけで、言ってみれば基礎的な使われ方をしています。ただ、SOCのいろいろな予測力が明らかになっている昨今で、介入研究の方に関心が移り始めているのも事実のようです。
そうしたとき、SOCスコア自体はどのような使われ方をするかというと、アウトカム指標なので既に絶対的な意味を持ったスコアとして使用することになるかもしれません。これは、スケールの標準化作業が急務になって来そうです。標準化作業については多分私達の仕事かもしれません。13項目5件法版については、層化多段無作為サンプルでの全国調査を行っていて標準スコアが出ていますが、国際的に使用されているのは7件法のほうですので、こちらの7件法版の全国サンプル調査を行って標準化をしていかねばなりません。
(13項目5件法版)http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jshhe1931&cdvol=71&noissue=4&startpage=168&lang=ja&from=jnltoc
ただし、国際標準化は難しいと思われます。文化的なバイアスがあり、それは単にスコアの高低でなく、同じスコアであったとしても質問内容の本質的な部分で異なっている可能性があるため(きちんとバックトランスレーションは行っているのですが)、単純比較できないという点です。SOCの文化間比較についてはこれまでにいろいろ議論がありました。稿を改めて記載したいと思います。