sense of coherence得点の高低の考え方

以前にも書いたかなと思っていたのですが、書いていないようでしたので、このタイトルについて書こうと思います。と言うのも、このことについても非常に多くの質問が来るからです。
似たような内容は、以下です。
http://d.hatena.ne.jp/ttogari-tky/20101222/1292988093

SOCスケール得点で何点以上が良くて、何点以下が悪い、という明確な基準はありません。QOL尺度とか、CESDなどの抑うつ尺度のようなものでは、何点以下だと罹患リスクが高いといった判断ができるのですが、SOCはそういったスクリーニングを目的とした尺度ではないからです。
身長や体重も何cm、何kg以下あるいは何cm、何kg以上だと異常、あるいは、BMIのようにしていくつ以上だと肥満でいくつ以下だとやせ、という判断ができます。
ただSOC自体は高い方が良いし低いと良くないことは漠然とわかってはいるのですが、あくまでも連続量としてのsense of coherenceを測るのみになっています。
Antonovskyが健康を、健康―疾病の二分法でみるのか、health-ease, dis-easeの直線上にある連続体として捉えるのか、前者が疾病生成論的発想で、後者が健康生成論的な発想であると言っていました。医学系、看護系の先生方から、良い悪いの判断基準についてよく質問が来ると言うことは、おそらくは、疾病生成論的な発想があるからかなあ、とも思います。これは医療化の問題とも大きく関連していて、SOCが低い=病気であるとし、治療が必要であるとするような新たな疾病の出現と医療の範疇の拡大に関係することにもなり、慎重にならなければなりません。病気だ、となると、助けなければ、と言うのが、医師、看護師の役割であるし、彼ら彼女らはそうした動機があって活動を行う一方で、極論ですが、病気でなければ直接的な治療・療養支援活動する必要がなくなるので動機がなくなって、関心が低くなるのかもしれません。グレーゾーンの人、という発想も同様で、疾病生成論的なものだと思います。
しかし、医師や看護師など医療職は、確かに病気と診断された人を助けるのも仕事かもしれませんが、診断、治療ではなくて、より健康的な状況に引き上げる、押し上げる手伝いをするという役割もあるはずです。SOCに関しても、何らかのスクリーニングあるいはアセスメントツールとしての活用可能性(=診断・治療につなげる)も今後の課題としてある一方で、どうすれば押し上げられるのか、どこからが悪く、良いのか、という発想ではない、連続体として捉えたうえでの関わり方(相対的な捉え方)と、その発見ということが今後の研究テーマとして大事なのではなかろうかと思います。