難しいことはやさしく

現在、今夏から秋にかけて刊行する予定の高校生のSOCに関する本の執筆を行なっています。これは、私が博士課程2年から3年生のときに計画したある高校の全生徒と保護者を対象として3年間追跡するという縦断調査データの報告という位置づけで、山崎先生に背中を押された形で執筆することになりました。この調査は元々は私の学振研究員の計画を元として始めたものでしたが、ここで着眼したかった一つの概念である「家族の習慣」インベントリーの開発も含めたかったので、当時博士1年生や修士1年生だった後輩達も巻き込んで、また対象校の養護教諭も加わっていただき調査グループを組織して実施してきたものです。
対象校は一つの高校なのでバイアスはあると思いますが、保護者とカップリングしたうえ、3年間追跡できた点で貴重なデータなので公表していかねばならないと考えていてメンバーがいろいろ論文化に取り組んでいます。若い院生や研究者が多いのでどんどん論文化していって欲しいのですが、本当は良くないのかもしれませんがレフリードジャーナルになると手が止まってしまう人が少なからずいて、埋もれないうちに何とか書籍と言う形で公表できないかといろいろ山崎先生が手を尽くしてくださり、有信堂さんが検討してくれることになりました。
有信堂高文社の社長の高橋さんからは、前回発刊した「ストレス対処能力SOC」が少し難しい内容であったとのこと、できれば実務者が読んで実践に生かせるようなレベルにして欲しいといわれました。ストレス対処能力SOCは実務者ではなくてSOCの研究をしている修士課程の院生や卒論に取り組む学生などをターゲットにしているので、理論的に成ってしまわざるを得なかったのですが。。とにかく今回はわかりやすく執筆するように心がけています。そのときに社長さんに言われたのが井上ひさしの言葉でした。
むずかしいことはやさしく。
やさしいことは深く。
あとでネットで調べたら、続きに以下のフレーズがあるようです。
深いことは愉快に。

研究者にとっては訓練されているので難解ではないのですが、一般にとって難解な用語は数限りなくあるし、こうした言語を操作して新たな知見を見つける作業が研究と言う営みかもしれません。が、それは研究遂行上の話で、研究成果を一般に返すときにそのままでは意味が通じないのはよくわかっているつもりですが、わかりやすくするのはなかなか難しい作業だとつくづく思っています。逆に本当に専門用語の意味を理解していないと、平易な言葉に直すことができないわけで、自分自身の理解の浅さにあきれることもあります。。。それに、ただやさしいだけではダメで、深くないといけません。深いだけはなく、それに興味を持ってもらわないといけません。。。
とにかく来月中旬に締め切りを設定しているので、それまで気合を入れてやっていきたいと思っています。