保健医療社会学会

先日日本保健医療社会学会に参加してきました。保健医療社会学会はかつては旧健康社会学教室、さらにさかのぼって旧保健社会学教室が中心となって運営されていたこともあり、研究室の先輩や後輩も多く参加しており私も院生の頃から何度も発表をしている学会です。山崎先生も会長であった時期もあるため、SOCについてある程度知っている研究者が集う数少ない学会のうちの一つです。配布資料は以下です。
配布資料保医社11.pdf 直
パワーポイントで発表する人はパソコンを持参するよう書かれていて、重たいし、トラブルのもとにもなりそうなので配布資料で報告しました。久々でした。しかし見事に時間オーバーで、座長の先生に迷惑をかけてしまいました。。。
SOCについて関心がある人が多い学会とはいえ、私のセッションは健康観と名が付けられたセッションで質的研究から私のような量的研究まで全く持って幅が広くて、なかなかまとまりがないところだったのもあり、質問も方法論的なところばかりでちょっと残念でした。
あまり当てはまりは良くないのですが、質問者に指摘していただいて、確かに、従属変数間(健康関係の指標間)の関連性は見ていないので、何も一度にすべて入れて計算させなくても良く、別々に計算させて適合度を見た方が確かに良くなるはずで、これは良い指摘をいただいたと思いました。
本来の売りは、SOCの変化に裁量度の変化や、職場の不安定さ(一年後に失業する恐れがある程度)が関与していた点です。
仕事をコントロールできるようになるとか、時間を自由に調整できるとかそういった度合いが強くなるほどSOCが高くなるという関係にあるということは、自分自身のしごとが社会的に重要で、自分がそれを動かしているという実感につながり結果形成への参加というSOCを向上させるための人生経験にもつながりそうです。それにストレッサーもうまく回避したり対処できたりしそうで対処の成功というSOCの向上につながる経験もしやすくなりそうです。
もう一つ先行きの不安定さが増えるほどSOCが下がるという関係も見えました。これは不安定さとSOCのベースラインの値との関係は見られないのですが、変化と変化の関係だけは見えています。先行きが見通せない状況が強くなるということは、一貫性のない不安定な経験を強いられるようになるということです。この経験はSOCの下位尺度である把握可能感に関与します。
不安定さとSOCとのベースラインとの関係はというと、これが難しいのですが、ベースラインでの評価とその後の評価と器質的に異なっている可能性があります。この調査の時点1は2007年、時点2は2008年、時点3は2009年です。2009年の評価というのは、リーマンショック後の評価になります。このデータから判断はできないのですが、2007年時点ではSOCとの関係はみられなかったのが、2009年の評価(2007、8年からの落ち込み)のばらつきがかなり似ていたということで、この評価が深刻なものであった可能性もあるのですが、細かくデータを分析していかないといけません。

そのような形で報告を終えました。早く論文化しないといけないです。
あと、忘れていけないのは、こうした先行きの不安、不安定さというものと、精神医学的な「不安」症状とは随分異なると思います。前者は身の回りの社会や環境(身体的なものも含む)を評価しているのに対して、後者は心理的な状態あるいは特性なので性質が異なります。SOCは確かに心理学的あるいは精神医学的な「不安」と大きく関連を示しますが、あくまでもこちらはSOCは精神健康の状態に関与するというモデルの現れになります。