第21回IUHPEでの健康生成論やsense of coherenceの取り上げ方について(その2)

前回第20回世界会議では、Bengt Lindström氏らにより、会期中連日午前午後にわたりシンポジウムやワークショップやパラレルセッションが行われており、会議全体が「健康生成論」一色という状況でした。しかし今回では健康生成論関連の報告は8月26日の一日に集約されていました。
しかし、これらのセッションについては非常に内容が濃く、奥深く、今後の健康生成論とSOCに関する研究のあり方を指し示すようなものであったので、少しだけ紹介してみたいと思います。

まず、Sub-Plenaryセッションは8月26日午後に先ほど紹介したLindstrom氏により、「健康生成論的アプローチにより非感染性疾患を減少させるために」、というテーマで実施されていました。ここでは、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、北米の4パートに分かれて、同時にそれぞれの地域における取組みについて報告がなされていました。私はアジアおよびヨーロッパのところを行ったり来たりしていましたが、ヨーロッパの報告は大変に進歩的で学ぶところが多くあったように思います。これらの報告は、健康生成論的アプローチとして、概ね能力の向上と資源の整備に焦点を当てた取り組みが紹介されていました。
このうち、スイスのBauer氏は、資源に焦点を当てたアプローチとして労働者を対象とした「Job Demands-Resource-Health Model」の提唱と検証を報告していました。このモデルは、不眠や疲労、痛みといったネガティブ・ヘルスに影響を与える要因として時間的圧迫や役割の不明瞭さ、質的負荷といった仕事の要求度を挙げ、満足やコミットメント、仕事の熱中といったポジティブ・ヘルスの要因として管理者からの支援や評価、同僚からの支援や評価、コントロール度といった仕事の資源を挙げたものです。Bauer氏によると、前者は疾病生成論的関係としていて、後者は健康生成論的関係としていました。調査の結果それらの関連性が明らかになったものの、資源とネガティブヘルスの間には負の関連性がありましたが、要求度とポジティブヘルスとの間には関連性がみられなかったと報告していました。
また、Bauer氏は資源と要求度の「比」に着眼していました。つまり、資源が要求度を上回ることで、ネガティブヘルスは減少し、ポジティブヘルスは増加する、ということを示していました。また、疾病生成論的な視点だけでなく、資源とポジティブアウトカムに着眼する健康生成論的な視点を導入することにより健康的な組織作りが大きく進展すると述べていました。

次回はオーストリアの取り組みについての報告です。