HardinessとSense of Coherence

 KobasaのハーディネスとSOCとの違いについて、先日の第7回「こころの健康と経営戦略」フォーラムのシンポジウムの打ち合わせのときに話題になりました。http://d.hatena.ne.jp/ttogari-tky/20121107
 SOCとなにが共通しなにが違うのかというところで整理してみたいと思います。まず、共通点としては「人生や生活に対する見方や考え方」に関する概念、ということ、そしてそれがストレス対処能力、ストレス耐性をもつという点でした。レジリアンスの理論からすると、レジリアンス因子である、という点で両者は共通していると考えられます。元々の私の印象ではHardinessはパーソナリティーなのではないか、と思っていたのですが、このときのお話によるとパーソナリティとはちょっと違うとのことで、上記のような志向性であるとのことした。そうなるとその辺りがSOCと類似しているように思いました。
 ちなみに以降の私のHardinessの理解は以下の本からになります。
サルバトール・マッディ他「仕事ストレスで伸びる人の心理学」(英題Resilience at Work)ダイヤモンド社 2006年
 ハーディネスには3つの下位概念があって、3Cと言われていて、commitment, control, challengeになります。comittmentは、自分が直面している状況が重要で、関わりをもつに値する、と思えることで、出来事にしても人間関係にしても、重要と思えることになります。controlは自分にプラスになるように周囲に対する積極的な働きかけをすることで、challengeは変化を受け入れて充実した人生を歩むための手段とみなすこと、とのことです。これらのうち、challengeとcommitmentはSOCの有意味感をより引き延ばして詳細に見たような概念であろうと思われました。出来事を挑戦とみなすとか、重要と思うとか、変化を意味付けするとか、です。
 しかし、SOCの下位概念の処理可能感や、把握可能感にあたる部分は見られないようにも思われました。ハーディネスの残る下位概念であるcontrolは(パーリンのSense of Masteryに近いものだと思いますが)、一見して語呂レベルではSOCにおける処理可能感manageabilityと近いと思う人もいるかもしれません。しかしこれは全くもって似て非なるものであろうかと思われました。
 処理可能感はあくまで、周囲の資源を利用できる、資源に手が届くという感覚であって、周囲に対して何か働きかけるとか、周囲を変化させる、コントロールする、ということではないです。どちらかというと、処理可能感のほうが、大人しい感じで、環境なかにいる自分、という印象で、controlは、環境を操作する自分、という印象のように思います。後者を個人主義的という人もいるかもしれません。
 実際にKobasaは成功を収めた米国の実業家を中心にインタビューしてその特徴を概念化してこのHardinessを導きだしたとのこと、上昇志向のビジネスマン向けの感覚なのかもしれません。ユダヤコミュニティの市民を対象に導きだしたSOCとは出自が異なるようです。


仕事ストレスで伸びる人の心理学

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