術後せん妄とSOC

先日の聖路加ポジティブサイコロジー勉強会で報告されていたのは、術後せん妄とSOCに関する計画の報告でした。
http://positivephealth.blogspot.com/
看護領域におけるSOCの研究ではナース対象の研究は多いのですが患者を対象としてSOCを測って使用する研究は日本国内でも、海外でもそれほど多くはないので、色々な意味で面白い研究になりそうだという話になりました。
計画を聞いていて、主宰の中山先生も声を大きくしていっていたのですが、術後せん妄自体が症状としては捉えられているのですが、医学生理学的あるいは心理社会的な発生メカニズムについてそれほど多くはわかっていないということで、まず不可逆的な変調なのか、可逆的なのか、心理的ストレスによるものなのか、物理的ストレスによるものなのか、緩衝要因や増幅因子があるようなものなのか、ICUや救急の領域では問題視されているある種の病状ではあるものの、例えば精神神経医学領域や脳神経系の領域ではあまり扱われていないもので、とらえどころがない病いである、という点が気になりました。医原病ではあるのですが、下手すれば医療化の問題とも絡んでくるのではないかと。
SOCがこのせん妄の発生を抑制させるあるいは緩衝させるというような仮説なのですが、そもそもせん妄自体がどのような形で起こっているのかを理解しないとSOCがどのように関与するのかわからない訳で、何のための研究なのか、という話になってしまうと思いました。そのあたりは、きちんと整理した上で計画書を練って行く必要があるのではないかという話でした。
ただ、もし、せん妄がストレスによって生じるもので、ICUという環境の中でその人が使える資源(私は、術後せん妄発生を抑えるためにSOCが動員する資源は生理学的な資源に限られるのではないかと思うのですが)を活用してSOCがせん妄を抑えることができると考えうるならばそういった研究は意義が出てくるのではないかと思いました。
いずれにせよ、もう少し下調べが必要なのかもしれませんが、良い研究になると良いと思いました。