SOC研究の展望

新年に入り、修士論文の審査や、放送大学教材の執筆・編集作業などで時間が取られて、全くもって自分の研究に取り組む時間がなく、ちょっと焦ってきました。おかげで?このブログも更新できず、残念きわまりない状況が続いています。
全然研究的なことをしていないので頭がなまっているのですが、新年初の書き込みになっているので、今年の抱負もかねてSOCを利用した研究について今後の展望を書いてみたいと思います。
現在SOCを用いる研究の課題とは大きく3つあろうかと思います。
ひとつは、SOCの向上のためのメカニズムの探索です。SOCが心理社会的環境によって左右されることは良くわかったのですが、そこからどのような経緯を経てSOCの向上につながるのか、という検討についてはまだまだ足りないようです。山崎先生が行なっている具象化研究というのもそれに近い研究だと思いますし、あの具象化研究で扱われている、perceived positive changeや帰属感などの近隣の指標でかつ、SOC向上の要因にもなりそうな指標を、心理社会的環境要因とSOCとの関係の媒介因子として扱った研究などあると、SOC向上のためのメカニズムが見え、示唆に富む研究になると思います。
ふたつめに、介入方策についてです。サルートジェニックな介入プログラムを開発する必要があります。それは認知行動療法的なものでもグループダイナミクスを利用したものでも、周囲の人やものをはじめとする汎抵抗資源に気づき、それを利用していていくという作業、言い換えると身の回りの人やモノ、自分自身の中の可能性もふくめ、そうしたものが信頼のおけるもので利用できるものだと気づいて実際に日常生活のなかで繰り返し使ってみてよりそれが信頼できると実感できるということが促されることが重要であろうと思います(処理可能感)。また、そうした周りにあるものや人、世間や社会が安定していると実感できることも重要です(把握可能感)。また、生きがいや、やりがいがあると感じることを見つけること気づくことが重要です(有意味感)。こうしたプロセスを含めた介入プログラムを開発し介入を行なうことが課題であろうと思います。その一方で、現在確立している介入についても上記のようなプロセスを含んでいる者があるかもしれないので、見直した上でSOCを評価してみることも必要かもしれません。個人的には看護領域に期待をしていて、例えば周手術期の患者について一連の看護師による関わりの評価はQOLや患者満足度だけでなく、SOCでも評価できるのではないかと思っています(私の思い込みかもしれませんので、詳しい方はコメントを下さい)。
三つ目に集団の中でSOCがどのように働いているのか、ということだろうと思います。SOCが高い人がいることで、周囲の人はどのような影響を受けていくのか、というような観点での研究です。昨年話題になったChrstaikisらのネットワーク論で肥満がソーシャルネットワークを通じて伝播するというようなことがわかっているのですが、SOCもどうなのか、ということです。SOCがあまりにも高いと鼻持ちならない人のようになり良くないことはわかるのですが、ある程度の高さが周囲に及ぼす影響はどんなものなのか、SOCの重要性について一歩踏み込むことになるのではないかと考えています。