思春期のストレス対処力SOC -親子・追跡調査と提言

思春期のストレス対処力SOC―親子・追跡調査と提言

思春期のストレス対処力SOC―親子・追跡調査と提言

 先月から紹介している「思春期のストレス対処力SOC -親子・追跡調査と提言」ですが、今月半ばに刊行されました。私は海外にいて紹介が遅れてしまいました。どんな反響があるのか、結構心配しておりましたが、ふたを開けてみると各方面から、なかなか良い本とか、自分も親なので興味があるとか、非常に好印象な反響が多くてホッとしています。
 はしがきに書いたのですが、私が学振研究員でもらっていた科研費と、その後山口大学に着任してもらっていた科研費、そして山崎先生の科研費で、分担して調査を行っており、各調査については、それぞれ様々な形で論文化が進んでいます。もちろん手つかずの部分もありますが。元々は、私が博士論文としてまとめようと思っていたのですが、準備にすごく時間がかかって、自分が院に在籍している間には終わらないこと、データとして使える状態にはならないと思い、急遽違うデータで論文を書きました。しかし、この調査は継続して、私自身の投稿論文や、一部は後輩の博士論文にしたり、投稿論文にしたり、一部は社会調査実習でのデータにしたり、様々な形で学術的な活用がなされ、公表をしてきました。
 学術的な研究論文として世の中に出すことは本来の研究の目的であり、将来の人類・市民の幸福につながるものであることは間違いないですし、信じて研究を行っているのですが、調査協力を頂いた方々からすると、本当に将来の役にたつものなのか、研究のための研究をしているのではないか、そのような印象を持たれても仕方がないとも思います。
 かといって、学問をする者にとって、軽々しく協力者に生の分析データを返すのは慎むべきこととも思います。慎重に吟味を重ねて本当に研究協力者が見て役に立つとおもえるような分析結果とはどのようなものか、また、研究協力者がその分析結果を理解できるかどうか、そういった部分も勘案してまとめる、という作業も我々大学で研究する者にとって重要な作業とも思いました。いわば、研究者と協力者のコミュニケーション、という所だと思います。
 そこで、必要以上にわかりやすく、簡単にする、というような態度ではなく、わかりやすくしつつも、厳密な手続きの下で調査分析をし、その結果を示している、ということを読者にも理解してもらうことが、手間かもしれませんが、正確に今回の調査結果を受け取っていただけることにつながるのではないかと考え、専門用語や見慣れない言葉については、どんどんコラムボックスを作成し、逐一わかりやすい言葉で説明していこう、ということ、また、分析結果については、端折らず、やや難しい場合は、Appendixとして後ろにまわすものの、省略はしない、という姿勢で書きました。
 読み手が、養護教諭や学校の先生、思春期にかかわる看護師保健師助産師といったふうに、ある程度の専門性をもちつつも実務に当たる方々を想定していますが、保護者の方々にも目を通していただきたいとも考えています。また、SOCに関心を持つ学部生や院生や研究者の方々もそれなりに満足頂ける内容になっているとも思います。是非お求め下さい。