11月の第76回民衛学会を終えて

いろいろバタバタしている間に、11月が終わろうとしており、このブログもまったくもって更新ができていない状況になってしまっています。本来なら、もっと最近のSOCに関する研究論文などをモニタリングしながら紹介しなければいけないのですが。。。。
11月の23,24日に福岡大学で民族衛生学会がありました。
民族衛生学会は、名前からすると奇妙な、古い印象がもたれます。実際に戦前の学会誌を見ることができるのですが、犯罪と遺伝とか、優生学とか、そんな古い思想の元で発足した学会です。
http://www.journalarchive.jst.go.jp/japanese/jnltoc_ja.php?cdjournal=jshhe1931&cdvol=1&noissue=1
この辺り、そして、戦後の民族衛生学会の歩みについては、今回の学会長の守山先生がまとめていて、いつまで公開されるかわかりませんが、興味がある方はどうぞ。大変に読みごたえがあって面白いです。
http://jshhe2011.jpnwellness.com/en/node/20
戦後は東京大学の旧保健学科出身の人たちや、国際保健学、人類生態学の人たちが中心に集まって、また文化人類学系の方もいたり、実にmultidisciplinaryな学会へと変貌しました。といっても、東大保健学科も健康科学・看護学と国際保健学にわかれ、健康科学・看護学も健康総合科学と名前を変え、講座やそのスタッフも大きく変わり、保健学科当時のスタッフや出身院生も高齢化してきていて、この学会を担っている方々も高齢化が進んでいる状況であります。
個人的には、この領域の知見や学会における議論は、既存の狭い見方にはとらわれなくてグローバルに、また社会学のように目からウロコを狙っているというわけではなくて、間接的に現在の体制への批判と反省が含まれている態度があり、さらには、方法論に対して非常にこだわりを見せているというような点で、しっくりきて面白いと思っています。また、高齢化したとはいえ、諸先輩方のキレの良さと思考の柔軟さと後輩に対する温かさは、年を追うごとに強まるようにも見えて、好きな学会の一つです。

さて、今回の学会では、演題の報告とラウンドテーブルディスカッションの司会をしました。
演題報告については、以下です。
民衛11報告.pdf 直
SOC3スケールの信頼性と妥当性の検討で、4年間の追跡で予測妥当性があったかどうかを見ています。
結論としては、4年後のメンタルヘルスやSRH、生活満足、希望のそれぞれに、4年前のそれぞれの値を制御しても大きさとしては、0.1〜0.15程度の値を得ることができていて、ある程度の予測がみられることがわかりました。
有意になってホッとしています。

質問で、有名なTHIという健康チェック票の作成を行っている鈴木庄亮先生から、測定結果の数字を対象者に返しているのか、と聞かれました。
測定結果の数字(何点か)というのはわかるのですが、何点以上で、どんなリスクがあるのか、というようなカットオフポイントまではまだ出せていないという現状にあります。罹患と併せてROC分析を行っていくことも考えていいのですが、スクリーニングされた結果どのような指導を行って改善を(SOCの向上を)図るのかについてまだまだ検討が必要な状況です。
ただ、そろそろ考えてもよいかな、とも思っています。しかし、もし検討するなら、13項目版のデータでやりたいところです。13項目を長期にわたって取っているデータがない状況下では、なかなか難しいです。

RTDは、山崎先生のSOC具象化研究に関する内容の司会でした。
内輪になってしまうのかと思いきや、多くの方の参加を頂き、本当にSOCの注目が高まっているように見受けられました。
山崎先生自身の説得力のあるプレゼンもあって、臨床系の先生方たちにとっては、すぐにもケアに生かせるような内容のうえ、量的な研究のハードルが下がったとのこと、非常に興味をもっているのが印象でした。