sense of coherence と 感謝、positive reframing

先日聖路加でpositive psychology勉強会があり、発表をして来ました。
Lambert NM, et al. A changed perspective: How gratitude can affect sense of coherence through positive reframing, The Journal of Positive Psychology, Vol. 4, No. 6, November 2009, 461–470
で、SOCとpositive reflamingとの関係、あるいは、positive psychology指標の一つである感謝(gratitude)との関係をみた理論的な研究で非常に興味深く、結論としては、感謝(自分に良いことがあったら世間や周囲に対して感謝の念をもつ傾向)は、positive reflaming(benefitfindingのような、困難に陥っても良い面を見つけることができる)を介してSOCに影響する、というものでした。発表ファイルは以下です。
PP 直
これは、いろいろな意味で重要な結果で、まず、この「感謝」概念とは何か、というあたりについて深めておかなければならないと思いました。SOCに影響するという概念ですが、何でもかんでも「感謝しましょう」というのは、盲目的な感じがして、感謝が意味することが何なのか、きちんとふまえてSOCとの関係を考えたいからです。著者達は、処理可能感や有意味感との関係を述べていましたが、やや強引な感じもしました。
次に、positive reflamingがSOCに影響するという点です。これは、処理可能感、有意味感に影響するという意味で非常に納得がいく結果ですが、その前に、positive reflaming研究やSOC研究は多くあるもののその相関をみた実証研究は以外と少ないということをふまえると、貴重な結果であったのではないかと思いました。
感謝とpositive reframingとの関係は、どちらが先で、どちらが結果か、というあたりで理論的に未整備だと思いますし、この研究からは明らかになっていませんでした。課題だと思いました。
理論的な検討なのですが、SOCを形成する要素とは何なのか、そこに大きく関与するという「感謝」という概念はなんなのか、この辺りを深めることは、SOCを強化するための介入方策に対して多大な示唆を与えてくれるはずで、そういう意味で非常に興味深い結果でした。