sense of coherenceと社会的要因

今執筆中の健康と社会という教材の中で社会格差と健康について書かねばならなくなりました。
社会経済的地位、社会階層と健康については、日本国内では近年格差問題が大きく取り上げられていることもあって、特に公衆衛生、疫学系の先生方によって検討が進んでいるようです。かつては私も社会学の先生方と全国調査を手伝ったことがあって、主観的健康と職業階層を見た時に、海外ではあまり高くないはずの農林水産業種で高いレベルであることが分かって、驚いたことがありました。
アントノフスキー自身も社会学者で、健康の不平等に関する研究を行っていました。アントノフスキーが活躍した1950年代から1960年代においても、英米では格差の問題が大きく取り上げられていました。
その時の研究がSOCの概念生成においても大きくかかわっているようです。著書を読んでいると、成育環境がSOCの形成に重要であるとする話では、階層の高いの人たちが住む地域と、低階層の人たちの住む地域と比較しています。前者はゆとりや安全、安心があって、比較的高い社会的凝集性がある一方で、後者は不信や不安、危険にあふれているようなくだりも見受けられます。
成年期になると、職業とSOCとの関係について触れられており、メルビン・コーンの職業とSelf-directionとの関係に関する一連の研究をもとに、職業の種類によってSOCもまた変わってくるのではないかという仮説も提示しています。
例えば、簡単な作業で誰でもできるような仕事と、複雑で技術を手に入れるのに時間がかかる仕事と、後者の方が仕事の達成までに大変な分、達成までのプロセスは良質な人生経験となりうることを言っています。例えば、専門職や、熟練技術職などで高くなるということでしょうか。つまりSOCを形成する、負荷のバランスが取れた経験と言うことです。
あるいは、社会的に重要な意思決定場面に参加できるような職業、例えば、ある程度の権限を持っている管理職や専門職、自営業主などは、そうでない職よりも高くなるはずであると。つまり、SOCを形成する結果形成への参加経験を得やすいということです。
この点については、博士論文で検討しているのですが、まだ公表していない状況です。。
一部は社会科学研究所のディスカッションペーパーになっています。。
PanelDP_005togari_SOC_SF.pdf 直
また、社会医学研究にも少しだけ載っています。
http://ergo.itc.nagoya-u.ac.jp/shakai-igakukai/report/no26-2.html

この研究は横断データを用いた研究ですが、調査自体は追跡調査なので、その後追跡データも出ていて分析しています。1年後、2年後のデータを利用した研究でもほぼ同様の結果が出ているのですが、まだ学会発表どまりです。。
溜息が出ます。コツコツ書いていかねばなと思います。完全に甘えなのですが、東大にいたころは、山崎先生から背中を押されたり、頑張っている周りの人たちに引っ張られてよくペーパーを書いていたようにも思います。ただ就職すると、日々の業務に追われてそれどころでなく。しかし、そういった中でも自分に鞭打って書いていくのがプロなのでしょうね。。