sense of coherenceは生涯発達するのか


これもIUHPEでEriksson & Lindstrom氏によって報告されていたSOCスコアの年代別推移です。良く見えにくいと思いますが、年齢によってSOCスコアは上昇傾向にあるようです。どうもこれは、過去の研究で報告されていたスコアをまとめてプロットしたもののようです。文化的(言語的)な差異はどうなっているのか、Finlandだけのデータなのか不明ですが。
Eriksson氏はSOCに関するレビューを博士論文としたらしく、とにかく大変な仕事をされています。

以前に民族衛生誌(民族衛生71(4), 168-182, 2005)に投稿した5件法版のSOC-13の因子妥当性の検討論文があります。この巻末には全国調査の結果について、年齢別にそのスコアの推移を表にして示しています。
表だとわかりにくいので、男女別に図にしてみました。

これを見ても、男女ともにやはり年齢が高くなるにつれてSOCスコアが上昇していることがわかります。

一般に30歳でSOCは成長が止まるという説がAntonovskyから出されているのですが、SOCスケールで見る限りにおいてはそうはいかないようです。
年をとるにつれさまざまな経験をし、世の中のことが良く分かってくることは感覚的にわかりますし、老練という言葉があるように、年齢が高い方が色々物事に慣れて巧みになっていくことが多いという訳です。
SOCもまた、もちろんそのベースとなるものは乳児期や思春期、成人前期に作られるのかもしれませんが、その後年齢を経るにつれて少しずつこのように上昇していくのかもしれません。

ただ、SOCと精神健康、特にうつ傾向とは極めて相関が高い傾向にあります。精神健康は身体的健康と違って年齢が高くなるにつれて上昇する傾向があります。ここで現れているSOCスコアの年齢別差異は、精神健康によって説明できる部分も含むかもしれません。
残念ながらこの全国調査では精神的健康は測定されていません。精神的な健康状態で調整した上での推移の検討が必要かもしれません。