sense of coherence研究の広がり

山口大学での教員生活もあとわずかとなり、様々な関係の人たちから歓送会を開いていただき本当に幸せものだと思っています。
山口に来て驚いたのは、SOC研究を知っているどころか関心を持って実際に研究をしている先生方が多くいることでした。東大にいたときは院生だったこともあり世界が狭くて学会に行ったときにちらほら見ることがあった程度なのですが、学会で定期的に発表していなくても、SOCや健康生成論を気に入って、研究しています、という方が想像以上に多いのでした。
東大の山崎研究室では、SOCのスケールを用いて研究している院生は少なくないのですが、SOCの研究をしていますと宣言できる人は少なく、私はマイノリティでした。SOC自体が、操作できないもの、教育介入などによって何とかできるものでなく、成人になる頃に固まって、それ以上は上がらないという仮説が、院生達の興味を失わせていたようです。また、SOCとは何か、というところで端的な説明が難しく、うまく言語化できない分、まやかしのような、あるいは、宗教的なもののように受け取られてしまい、科学的な概念として扱えないようなものと考えている人が多かったからなのではないかと思います。また、良く聞くのは、概念は良いのだけど、尺度がどうも良くないのではないか、という意見です。Antonovskyらの苦肉の策なのでしょうが、7件法でSD法というあまり見かけない測定方式であったり、人生を問うような項目であるとか、いろんなバリアがあるにはあります。
私は丁度「健康の謎を解く」が刊行された2001年に研究室に進学したので、そうした難点についてはあまり考えず、この訳書を出した研究室であれば、SOCについて良く深めることができるだろうと、漠然とテーマにしたのでした。(続く)